2024年、夏。
「僕のヒーローアカデミア」が、連載で最終話を迎えました。
これは、初掲載から10年にもわたり世界中のひとから愛された漫画です。
登場するキャラクターのだれもが主人公のよう。
想いが受け継がれる。
正義と、べつの正義が激しくぶつかり合う。
読みながら、多くの熱いセリフと生き様に鳥肌が立ち、涙しました。
社会の厳しさを感じるたび忘れそうになる、ひとを思いやるこころの大切さに気づかされる作品です。
たとえば、わが子がごろりとくつろぎながら漫画本を読んでいたとしたら。
なんと声をかけましょうか。
もしも、ほんの少し否定的な言葉が頭をよぎったのなら、ぜひ漫画本の良さにも目を向けてほしいと思います。
それだけで、かける言葉に深みが出るからです。
言葉を選ぶときに役立ちそうな情報を、まとめました。

|この記事のまとめ|
・日本の漫画本には、世界に誇れる強みがある。
・子どもが漫画本を読むときには、どのような内容に興味があるのかを親も関心を持つことが大切。
なにが不安にさせるのか
「また漫画本なんて読んでるの?」という言葉がついでてしまうのは、どうしてでしょうか。
それは、日本の漫画本が、アメコミ(アメリカンコミックの略)にはかつてあったような「倫理規制」がないまま発展してきたことが関係しているのではないかと考えます。
漫画本には、「読む」ことの壁が低いというよさがあります。
小さいころからなじみのある絵本のように、絵と文字で内容が進むからかもしれません。
これはいいところですが、わるい面にもなります。
年齢制限に気をつけて種類を選ばなければ、こころの成長に悪影響をおよぼす内容を簡単に読んでしまっている可能性があるからです。
漫画本への漠然とした不安と嫌悪感の原因は、こういうところにあるのではないでしょうか。
ほんとうに気をつけるべきこと
親が気をつけることは、子どもの興味に関心をもつことです。
親として、人として、この内容はどうだろうと思う漫画本があることも事実です。
だからこそ、子どもがいまどのような内容の漫画本に興味があるのかを知り、いっしょに理解を深めるような努力はかかせません。
話題に出しながら、子どもが「自分で選ぶための力」を身につけていけるよう、力添えします。
あぶないことを避け、近づけないことよりも、いっしょに考え、ただしい知識や判断力を養うほうが、たくさんの情報にかこまれた現代で子どもを守ることにもつながるでしょう。
- どこがいいのか
- どこがいけないのか
- なぜ興味があるのか
- 心身への影響はどうなのか
ひとつずつ、向き合います。
これは、漫画本だけに限ったことではなく、いろいろなことにつながります。
日本漫画の歴史
世界で最も古い漫画は、日本で生まれたといわれています。
それが、鳥獣人物戯画です。

日本の漫画の歴史は、たくさんの視点から、いろいろなことが語られています。
たとえば、漫画のルーツは絵巻物であるとか、江戸時代には鳥羽絵が人気だったが漫画の先例として挙げられるのは浮世絵版画であるとか、そのようなことです。
そして、今わたしたちがよく見かける「漫画」は、明治時代がはじまりではないかといわれています。
「漫画」という名のジャンルが存在するという認識が描き手にも読み手にも共有され、かつ技法や様式の継承関係や連続性をたどることができるという意味での「漫画史」は、明治時代に始まるものだというほかない。
「鳥獣戯画」は、本当にマンガか?より
日本の漫画本は第二次世界大戦後、さらに発展しました。
- 手塚治虫
- 藤子・F・不二雄
- 石ノ森章太郎
- 赤塚不二夫
漫画の巨匠と呼ばれる彼らは、「トキワ荘」という名のアパートでともに暮らしていた時期があることはよく知られていますね。
戦後は、漫画家の社会的地位が低い時代です。
作品を批判され、くるしい時期もあったはず。
しかし、そのようなときもとなりで支えあいながら、漫画の力でたくさんの想いを世の中に、子どもたちに伝えつづけました。
「これでいいのか」
「わすれるな」
「あきらめるな」
「ふんばれ」
「ひとりじゃない」
「わらいとばそう」
そうして、いまにつながります。
日本の漫画本が世界に誇れるわけ
日本の漫画は、どうして世界中で読まれるほど人気なのでしょうか。
そのわけは、3つです。
- ストーリーがよく練られている
- たくさんのジャンルがある
- 単価が安い
読み終えたとき、「ああ、こういうことにつながっていたのか」と長く余韻を楽しむことができる作品がたくさんあります。
日本人の感性の良さや、勤勉さ、緻密さが輝いているからではないでしょうか。
また、かつてアメコミにはあった「倫理規制」がなく発展したことで、いろいろなジャンルがうまれました。
さらに、単価が安いときます。
白黒で描き、紙の質にこだわらない生産方法がよかったのです。
大人にも、子どもにも手が届き楽しめるもの。
これが、日本の漫画のすごいところです。
漫画本の良さとは
漫画本を読んで、なにかいいことはあるのでしょうか。
2つ、見つけました。
会話のネタになる

漫画本について、驚きの数字があります。
日本漫画の、歴代発行部数です。
この数字は、これだけの冊数が世に出回っていることと、それだけ目にしたことがある人、読んだことがある人、ファンがいるという事実を教えてくれています。
1位 「ワンピース」・・・5億部
漫画全巻ドットコムより
2位 「ゴルゴ 13」 ・・・3億部
3位 「名探偵コナン」・・・2億7000万部
4位 「ドラゴンボール」・・・2億6000万部
5位 「ナルト」・・・2億5000万部
6位 「スラムダンク」・・・1億7000万部
7位 「こち葛(略)」・・・1億5650万部
8位 「鬼滅の刃」・・・1億5000万部
9位 「進撃の巨人」・・・1億4000万部
10位 「美味しんぼ」・・・1億3500万部
「海賊王に、俺はなる!」
「あきらめたらそこで試合終了ですよ」
「心を燃やせ」
「心臓を捧げよ!」
「我が生涯に一片の悔いなし」
「真実は、いつもひとつ」
これらは、漫画本から生まれた名言の一部です。
聞いたことは、ありますか?
小説は、読みながら自分の中で想像を膨らませていきます。
対して漫画本は、作者の想像する世界へ入り、その世界に浸りながら読み進めていきます。
有名なせりふを聞いて頭のなかに浮かんでくるキャラクターやその表情、場面の雰囲気を、ほとんどおなじく、誰かと分かち合うことができるのです。
これは、漫画本の強みではないでしょうか。
「共有できる、共感できる」ということは、会話や関係性を深めるきっかけになります。
会話のネタとして使えそうな漫画本は、コミュニケーションを楽しむための武器として読むことも、いいのではないでしょうか。
自己啓発本としての学びがある

多くの書物から学びがあるのとおなじように、漫画本からも学べることがあります。
それは、「自己啓発」です。
自己啓発とは、自分の意思で、今よりもより高い能力、大きい成功、充実した生きかた、優れた人格を得ようとすることをいう。
- 苦しいときに踏ん張るための発想
- 慈愛に満ちた心で、人のために動くこと
- 目標に向かって、何度でも立ち上がる気高さ
- どのように仲間を大切にするのか
- 家族愛とは、なにか
- ほんとうの強さとは、なにか
- 誰も最初から強くはない、という真実
- 誰かの幸せを願う尊さ
- 他人の幸せを、ともに喜ぶことで得られる幸せ
漫画本を読み、感じたことや考えたことを通してじぶんが高められていく経験も、人生のいろいろな場面で活かすことができます。
アニメとの違いをいうとすれば、気になるシーンの解釈を、自分のペースで深められることではないでしょうか。
気軽に読みなおしたり、ゆっくりと文字を追ったりできますし、聞き間違えも起こりません。
そのことで、思わぬことに気づかされたりもします。
漫画本は、絵と台詞からつくれた自己啓発本です。
さいごに
日本の漫画本には、すばらしい作品がたくさんあります。
「これは読んでよかった」と思えるような漫画本が、きっとあるはずです。
ぜひ、子どもといっしょにその良さを味わっていただきたいと思います。