「まさか……」
人生には、そのようなことがたくさんあります。
社会人になってすぐは、子どもを育てながら当たり前のように働く姿を想像していました。
家族ができると、家庭で過ごす時間が仕事の癒しになるのだと。
現実がそう甘くはないことを知ったのは、第一子の妊娠中です。
なす術もなく、仕事から離れました。
そうして、子持ちの専業主婦の道を歩みはじめます。
共働きが当たり前になる社会で、子持ちの専業主婦はなにを想い、生きているのでしょう。
その道 6年の経験を踏まえ、まとめました。

|この記事のまとめ|
・日本の専業主婦は、年々減っている。
・専業主婦世帯が裕福という考えは、もう古い。
・働かない理由は、働くために越えなければいけない壁があること、もしくは家庭を優先したいという強い想いがあること。
・専業主婦にも、あたためている野望がある。
目次
専業主婦とは
専業主婦は、主婦業に専念している女性のことをいいます。
主婦業は具体的に、家事といわれる炊事、洗濯、掃除、生活に必要なものの買い出し、家計管理があります。
そして子どもがいる場合には、子育ても含まれます。
国の基準では、「税金が発生するような所得がないため扶養家族となる妻」のことを指します。
日本の専業主婦はいま……
日本の専業主婦の状況を、調べました。
数字でみると

専業主婦の世帯は年々減り、共働きの世帯が増えています。
2021年の国の調査では、64歳以下の世帯のうち専業主婦世帯は23.1%です。
2021年と2022年の専業主婦世帯を比べてみると、28万世帯減っています。
どうして減っているのか。
それは、別の調査で明かされています。
国が実施した「ライフコースの希望調査」というものです。
調査では、専業主婦が未婚男性から求められなくなっていること、女性も専業主婦を選ばなくなっていることがわかっています。
労働力不足や男女平等な社会作り、金銭面の問題、多様性。
そんなさまざまな社会的背景があり、専業主婦世帯は減りつづけているのでしょう。
裕福なの?NO!

いまの日本では、専業主婦世帯がかならずしも裕福だとはいえないことがわかっています。
専業主婦世帯の貧困率は、全世帯の貧困率よりも高いというデータ(東洋経済ONLINEより)もあります。
働きたくても働けない、世帯収入がそこまで重要ではないなどの理由があると考えられます。
それでも専業主婦を選ぶわけ
専業主婦だから裕福というわけではありません。
それでも働く選択をしない理由は、どのようなものでしょうか。
いくつかの壁がある

どうすることもできず、専業主婦を選んでいる場合があります。
低学歴で、仕事に結びつけられる資格や技術がない
働くために必要な最低限の知識がない、就きたい仕事にいかすことができる資格がないことがあります。
保育園が信用できない
”質” を問題視しているためです。
預けるよりも、ある年齢までは自分で育てようと考えることもあるでしょう。
親の世代からの影響
いま子育てをしている世代の母親が専業主婦だったという家庭は、まだまだ多くあります。
子育てのアドバイスをもらうなかで、価値観や考えかへの影響はあるでしょう。
求められている
いまではまれなこととは言え、「家庭を守ってくれる安心感が欲しい」「家の管理をまかせたい」と考える男性もいます。
介護や同居により、夫以外の家族から家にいることを求められることもあります。
つまり、家族や夫婦の事情です。
仕事や家庭以外での役割がある
幼稚園や小学校の役員活動、ボランティア活動に時間を割いている場合です。
だれかがやらなければいけない役割を、陰ながら支えていることもあります。
譲れないことがある

自分の意志で、専業主婦をえらぶこともあります。
労働経済学の専門家によると、日本人女性はアメリカや中国の女性と比べて、貧困かどうかは幸福度にあまり関係しないそうです。
個人よりも、家族との時間の充実が幸せだと感じる人が多いといいます。
どきりとしますが、わたしもそこに当てはまります。
子どもがふたり。
どちらも幼稚園入園まではいっしょに過ごしました。
理由は、そのほうが家庭の雰囲気がいいと感じていたからです。
家計は苦しくなりましたので、たくさんの見直しをしました。
その苦労は家族のえがおで吹き飛びますし、やりがいもありましたので、世帯収入は高くなくても仕事をはじめようとは思いませんでした。
そのような理由も、少なからずあるのです。
“子育て専業主婦” の課題
子どもがいる専業主婦を経験した立場から、心とからだが健康であるための課題を3つ挙げます。
社会とのつながりかた

はじめての子育てはとくに、社会とのつながりかたを見つけられず母子で孤立してしまうことがあります。
そして、母親の自己肯定感がおおきく下がります。
子どもと過ごすための努力を労ってもらえたり、ほめてもらえたりする機会があまりにも少ないからです。
子育てをするときにこそ、人との関わりは必要です。
母親が閉じこもらないようにするためには、子どもを連れて気軽に過ごせる居場所を社会のなかに作り続けることが大切ではないでしょうか。
よき理解者と協力者を

育児の負担についてたくさんの調査結果があります。
その多くが、専業主婦でも子育てを「ひとりですべて」するのは無理だといいます。
そして、そのことを当事者と周囲はわかっていないようです。
耳が痛くなります。
できるかぎり協力者をつくり、家庭やじぶんの状況を理解してくれる温かいつながりをつくる必要があるでしょう。
核家族での子育てでは、とくに努力が必要なことです。
幸せの実感は?

子育てと家事を中心にした生活は、ほんとうに幸せなのでしょうか。
アメリカや中国とくらべて、日本人女性は家庭の幸せを優先する人が多いといいます。
しかし、専門家によるとそういう人ほど抑うつの傾向があるようです。
また、子どもの数が多いほど、はたらく主婦も専業主婦も幸福度が低くなるという情報もあります。
家庭にいることが合う人もいれば、家庭以外にも居場所があることで心の調子が整う人もいます。
家族との幸せを大切にしながらも、心やからだの調子を気にかけることを忘れてはいけません。
状況に合わせて方法を選ぶことができるようになる必要があります。
野望を胸に
社会から離れ、現実世界でのキャリアは空白。
肩書はなにも得られず、特筆することのない普通の人間。
専業主婦になり得られるものもあれば、失うものもあります。
このさき働きたいと思うときに、社会の役に立ち、生きていけるくらいのお金を稼ぐことはできるのでしょうか。
不安な気持ちが、あふれ出てきます。
それでも、「子どもや家庭を優先することがキャリアを閉ざしている」というような空気は、軽やかに吹き飛ばしたい。
これが、わたしの野望です。
家族のかたちが変わり、働く、子育て、家のこと、親がこなさなければいけないことの量が増えています。
それを一度にすべてやる道も、できる分ずつやる道も、どちらも変わらず女性の人生の充実につながるといいなと、巡る想いがとまりません。
この想いが形になり広がるよう、いまからできることを少しずつでもはじめたいと思います。

さいごに
専業主婦の事情は、年々変わっています。
働きたい。
働けない。
たくさんの事情をかかえながら、暮らしています。
それでも、胸の中にはひっそりと燃え続ける想いがあって……。
いろいろな立場や状況のひとたちのこころの声も、気になります。